桜『 桜 』 満開の桜の下 私は 舞い落ちる花びらを見上げていた。 それを見下ろす わたしがいた。 私は きれいな着物を幾重にも重ねて 髪をその上に長く引き 裸足で庭に立ち さくらを見上げていた。 ずっとずっと 見上げていた。 放心したように 見上げていた。 見上げていたのは さくらか それとも・・・ 「 姫 」 あなたは 私に呼びかけた。 はっとして 振り返った。 桜の枝を 一本 その細い 薄水色の袖でかきあげて あなたは 私を見ていた。 あなたは 微かに笑った。 私の髪が 風でゆれた。 袖の薄水色が 桜に映えて きれいだった。 まるで あなたの姿 そのもののように 儚い想い そのもののように・・・ |